コリアン部落〜幻の韓国被差別民・白丁を探して

 以前”被差別の食卓”*1を読ませていただいた上原善広氏の新作。サブタイトルに”幻の”とついているとおり現在韓国には”白丁"はいないことになっている。もちろんかつて”白丁”と呼ばれた人たちやその子孫はどこかにいるはずだが日本の植民地時代および朝鮮戦争の混乱を経て元の居住地から移動してしまいまた自分から積極的に”白丁”であることを公表することも無いから”現在の韓国に”白丁はいない”と言うことになってしまう。むしろ日本の被差別部落問題を韓国人に伝えると”日本ではまだそんな問題が存在しているのか、日本とはなんて遅れた国なんだ”と言われてしまう。しかし本当に”白丁差別"がなくなったかというとそうではない。
 例えば自身や子供の結婚相手が”白丁”と分かってもその結婚を許すかとの問いに対しては多くの人が反対すると答えている。しかし一方で過去の遺物と割り切っているからか時代劇やお芝居に"白丁"が出てくる機会は決して少なくないともいう。
 で、実際のところ”白丁"差別は今も残っているのかいないのかを追うために上原氏は足掛け五年にもわたる韓国長期取材を敢行する。
 いろんな人に話を聞いても”白丁”など今は無いと答えられる。また元"白丁村”と思われる地域を取材しても最初の雑談には快く応じてくれた地元の人たちが”白丁”について聴こうとすると態度をいっぺん話が聴けなくなってしまう。この態度豹変が潜在的には”白丁”差別がまだ残っていることの証拠でもある。
 現代韓国における”白丁”の実態を明らかにすることは出来ていない。がこれ以上”白丁”について(特に日本人が)明らかにすることはおそらく難しいと感じられた。
ただ明らかに出来ない取材過程がつぶさに記されており貴重な記録だと思う。