不時着

不時着
不時着
posted with 簡単リンクくん at 2006. 7.25
日高恒太朗
新人物往来社 (2004.8)
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ISBN:4404032145
価格:\1,890
 太平洋戦争末期、特攻として出撃した飛行機の中には航路途中にある島に不時着したものが何機かある。機体整備不良、燃料切れ、天候不良、そして特攻忌避。特攻隊員は何を考えて飛び立ち何を考えて不時着したのか。そして何を考えながら戦後を過ごしてきたのか。
 戦後悲劇のヒーローあるいは英雄視された特攻隊員とその生き残りたちがみな同じ考えでその風潮を見ていたわけではないと言うごくごく当たり前のことがよく分かる。
 知識に乏しい僕は特攻と言う言葉で一くくりにこれまでしてきたが志願の仕方やその時期により特攻隊内部でのさらには戦後の立場まで異なっていたと今回はじめて知った。また朝鮮や台湾からも特攻志願兵がいたことさらにこの事実が戦後ほとんど触れられず闇に葬られていたことなども本書を読んではじめて知った。
 この本で取り上げられた方でそれまでに戦争体験を積極的に語ってきた方は少ない。むしろずっと口を閉ざしてきた方が著者の取材で始めて語り始めている。
 著者は種子島の出身で父親は特攻で飛び立った飛行機の整備兵、母親も特攻で飛び立つ隊員を見送った経験があると言う。
 こういう著者のバックボーンがおそらく取材対象者の口を開かせたのではと思う。もちろん取材姿勢の誠実さもあったであろう。時には著者自身の環境人間関係も交えながら丁寧に取材を続けているのがよく分かる。これが大作にもかかわらず苦労せずに読みきれた一因でもあると思う。
 くどくど書きましたが先の戦争や特攻隊員のそのときの精神状態などに少しでも興味を持っている人にはぜひ手にとってもらいたい本。必読です。