著者は
朝鮮総聯傘下の雑誌記者をしていた経験もある
在日朝鮮人の方。日本人が感情的に
拉致問題を語るのとはちょっと違った視点からこの問題を分析する。いわゆる「
救う会」が公開している
北朝鮮に拉致された疑いのある失踪者名簿に疑問を呈するところから本書は始まる。失踪者名簿には1953年から2003年までに拉致された可能性のある200人以上の名前が列記されているという。しかし著者は拉致はこんなに長期間にわたって行われたわけがないと否定する。その上で
北朝鮮の対南、対日政策とその時々の国際情勢、
北朝鮮国内の情勢を分析し
北朝鮮が拉致を行う必要のあった時期やその方法、そこにどんな人間が関わっていたのかを細かく明らかにしていく。単純に
拉致問題を説くのではなくその時々の半島情勢や
朝鮮総聯幹部の関わり方まで明らかにしていく。一日も早く
拉致被害者の解放を、その為には
経済制裁も辞さないという主張を繰り広げている方には少し違和感を感じる本かも知れないが、
拉致問題とはそもそもなんなのかを知るためにはいい本だと思う。だが、最終章に戦前日本が
朝鮮半島で行った強制連行の話を付け足しのように書いているのは、決して日本軍の行動を正当化するわけではないにしてもやはり違和感を感じる。