紙の迷宮(ISBN:4151728511)

紙の迷宮 上(ハヤカワ・ミステリ文庫 HM 254−1)
デイヴィッド・リス著・松下祥子訳

出版社 早川書房
発売日 2001.08
価格  ¥ 798(¥ 760)
ISBN  4151728511

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紙の迷宮 下(ハヤカワ・ミステリ文庫 HM 254−2)
デイヴィッド・リス著・松下祥子訳

出版社 早川書房
発売日 2001.08
価格  ¥ 798(¥ 760)
ISBN  415172852X

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 先に珈琲相場師*1で経済歴史ミステリーを堪能させてくれたデイヴィッド・リスのデビュー作。したがって先に本書が執筆されたのだが、舞台となる時代は一世紀ほど現代に近づくことになる。本作の主人公元ボクサー、ベンジャミン・ウィーヴァーは珈琲相場師の主人公ミゲル・リエンゾの孫。と言っても特別ストーリーが繋がっているわけではない。それぞれ独立した作品。従ってどちらから読んでも楽しめるが背景となる時代の進み方を考えると先に珈琲相場師を読んでからのほうがより楽しみが増すかもしれない。
 ウィーヴァーは父親の死の真相を明らかにしようとするのだが、自らの力でそこにたどり着いたと言うよりも事件の関係者(の様に見える人も含む)に振り回されるだけ振り回された結果、何とかそこにたどり着いたと言う感じ。その振り回される過程で当時の金融市場の成り立ちや上流階級、下流層さらにユダヤ人の扱われ方など珈琲相場師と同様事細かな描写がこれでもかと言うぐらい書き込まれている。なんでもミラマックスが映画化権を買い取ったそうだが著者のこだわりを満足させる映像化にはかなりの時間とコストがかかるのではと余計なことまで心配になってしまうほど。もちろん背景描写だけでなく人物描写も同様。出てくる人物全員が胡散臭さ満載でいったい誰の証言を信じていいものか、主人公ウィーヴァーに同情し彼と同じように惑わされついつい読みふけってしまう。
 なお、この作品の背景となる南海泡沫事件は1720年に実際に起こった事件。(本作の舞台はその前年1719年)解説によると英語圏で歴史上最初の相場崩壊だそうだがそういった予備知識なしに楽しめる本。経済史好きにはお勧めです。