シナン(ISBN:4120035751)
シナン 上 | |
夢枕獏著 出版社 中央公論新社 発売日 2004.11 価格 ¥ 1,890(¥ 1,800) ISBN 4120035751 bk1で詳しく見る |
シナン 下 | |
夢枕獏著 出版社 中央公論新社 発売日 2004.11 価格 ¥ 1,890(¥ 1,800) ISBN 4120035794 bk1で詳しく見る |
”究極の何か”を追い求める人を描く作品という意味ではブッタを主人公にした”涅槃の王”や空海を登場させた”沙門空海唐の国にて鬼と宴す”と共通する部分もあるのかも知れない。が、読後感は先の2作品とかなり異なる。まず何より、人間以外の妖しげなモノ達が全く登場しない。主人公のシナンは16世紀、スレイマン公の元で全盛期を迎えたオスマントルコ帝国に使える宮廷建築家。彼は神を”セリミエ・ジャーミー”というモスクを建築することで表現した。
全盛を迎えた当時のオスマントルコ帝国は一方でやはり戦争の時代でもあった。シナンもスレイマン公について西へ東へと戦場を駆けめぐる。にもかかわらずここに書かれた文章に荒々しさ、毒々しさは全く感じられず淡々と書き進められる。これはシナンが作ろうとしたモノに文体が影響されたとも考えられる。一瞬迫力に欠けると感じるかも知れないが、そのおとなしい文体にいつの間にか引き込まれ気がつけば上下巻合わせて800頁を越える文章を一気に読んでしまった。