ギャンブル依存症とたたかう(ISBN:410603543X)

ギャンブル依存とたたかう(新潮選書)
帚木蓬生著

出版社 新潮社
発売日 2004.11
価格  ¥ 1,050(¥ 1,000)
ISBN  410603543X

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 正直に言うと”ギャンブル依存症”は自分には無縁だと思っていた。只自分の好きな作家帚木蓬生氏の作品というだけで手を取ってみた。しかしこの考えが甘いことは本書を開いて一頁目”はじめに”の第一行目からで思い知らされる。

 自分はギャンブルなんか嫌いだ、まったく興味がない一切やるつもりがない、と言う人がいます。しかし忘年会や新年会の集まりで、ビンゴゲームをやると、乗ってこない人はまずいません。(中略)ビンゴゲームもれっきとしたギャンブルなのです。(中略)誰もがギャンブル依存症になる素質を持っているのです。(中略)なぜなら、人間の脳の仕組みがそのようになっているとしか思えないからです。(後略)

 ギャンブル依存症が病気であると認められたのはまだ20年ほど前のことで世間に広く認知されたとは言い難い状況にある。この本は”病い”である”ギャンブル依存症”とはどのようなモノなのか。”病い”であるならば治療しなければならないわけでその為にはどのような方法があるのかを素人にもわかりやすく説いてくれる。公的な統計はまだ無いがアメリカやヨーロッパの統計や日本のアルコール依存症患者数などを勘案し著者は日本には200万人の”ギャンブル依存症”患者がいるという。”ギャンブル依存症”患者は多くの負債を抱えているため、家族友人他患者の周りの人たちに普通の病気の看護、介護以上の負担を強いる。その影響を受ける人数は高齢者とその介護に当たる人の人数と比べても決して少なくない。にもかかわらず国他公共機関の施策は皆無に等しい。さらに日本の特殊な警鐘を鳴らす。あくまでも”遊技”であり”ギャンブル”ではないとされる”パチンコ””パチスロ”、そして気軽にお金が借りられる消費者金融闇金融。この環境は予備軍をどんどん依存症に引きずり込み、また治療中の患者を元の依存症に引き戻してしまう。このままでは社会の土台が腐っていくと著者は強く警鐘を鳴らす。自分には無関係だと言い切れる人はどこにもいないと誰もが自覚すべき深刻な問題。一人でも多くの人がこの本を手に取りこの問題を考えるきっかけにしてもらいたい。