アフリカの瞳/帚木蓬生/講談社(ISBN:4062125161)

アフリカの瞳
帚木蓬生著

出版社 講談社
発売日 2004.07
価格  ¥ 1,995(¥ 1,900)
ISBN  4062125161

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 毎年1作ずつ大作を発表してくれる帚木蓬生氏、今年もまたずっしと重みのある400ページを超える作品が出た。今作は以前発表された”アフリカの蹄”の続編。前作から12年後の舞台は同じ南アフリカ共和国。前作ではアパルトヘイトからの解放がテーマだった。それから12年、制度的には白人と黒人の差別はなくなっていることになったが実情は異なる。社会的地位、経済状況における両者の差はまだまだ縮まっていなかった。そこに新たな問題が加わる。それが本作のテーマとなる”HIV”だ。
 単に”HIV”がテーマといっても医療行為や治療薬の開発ばかりが出てくるわけではない。むしろ政治制度や薬品業界の問題を次々と明らかにしていく。疲弊した社会の中で虐げられながら明るく前向きに社会を変えようとする黒人たちの姿を見ていると前向きになってくる。
 正直に言うと事件らしい事件は話半ばまで出てこない。その事件もやけに簡単に解決してしまう。しかしそんなことは問題にしないような大きなドラマが全編を通じて語られる。最後は帚木氏らしいハッピーエンド。残念ながら僕は不勉強なので現実社会の南アフリカ共和国や薬品業界がこういうハッピーエンドになっているのか分からないのだが是非、この作品にあるような明るい未来が見える社会であってほしい。