まほろばの疾風

 仙台に執筆の拠点を置く熊谷氏が平安時代東北蝦夷の長として活躍したアテルイを描く歴史小説。大和と対抗するためには米作りを中心とした大和と同じような国づくりをし体制を整える必要を感じる皮肉。大和側対象田村麻呂の説得が正しいと知りながら受け入れられない意地。この二つが混ざり合ってストーリーは進む。実は大和側との戦闘シーンよりも追い詰められた蝦夷側がどう対応するか内部で協議するシーンのほうが多い。むしろ気になったのは圧倒的な戦力を持ちながら力攻めをせずに蝦夷側を押さえたと記述されている田村麻呂のほうが気になる。残念ながら彼の人柄や集団統治に関する記述が少ないのですが蝦夷側の視点で書いた小説ですから仕方ないですね。
 熊谷氏にはアテルイの父親で一時期都にも上ったことのある男が主人公の作品もあるようで今度はそれに手を出してみるつもり。