あったかもしれない日本〜幻の都市建築史

 明治期東京の築港計画・官庁集中計画から始まって1970年大阪万博までさまざまな形で提案・設計がなされながら実現できなかった建築・都市計画を紹介しながら日本近代化の裏街道を見ていくような本。
皇紀2600年幻のオリンピックや万国博覧会など大規模のイベントから健康をテーマにした郊外の新興住宅地のモデルプラン。さらには琵琶湖を運河にして太平洋から日本海へ一気に抜けられようとする途方もない計画までさまざま。幻になってしまった理由も最初から実現不能なものもあれば残念ながら戦争や財政事情が原因になってしまったものもある。
上に”裏街道”と書いたがこれらの一部でも実現されていれば日本はどうなっていたのだろうか。歴史に”もし”は禁句だがついついいろいろと想像を掻き立てる本になっている。
 少し残念なことは、もともとが幻の計画なので資料が少ないのかもしれないしまた初出が建築専門ではない一般の雑誌連載だったことも起因しているのかもしれないが一つ一つのテーマに対する記述量が少ないように思う。で、結局どうなったのと思うところで記載が終わってしまう章が多々あった。後は自分の想像力の乏しさを呪うしかないのかもしれないが。図版も多数収録されておりいろいろ楽しい建築史に関してまったく知識のない僕でも面白く読ませていただきました。