メディアの支配者

メディアの支配者 上
中川 一徳著
講談社 (2005.6)
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ISBN:4062124521
価格:\1,890
 ライブドアとの攻防で自らメディアの格好の標的にされてしまったフジサンケイグループを追ったノンフィクション。と言ってもライブドアとのやり取りはほとんど触れられていない。
 内容は同グループを牛耳ってきた鹿内家三代の闇の歴史と、92年に起こった三代目宏明氏を追い出したクーデタについて詳細に記した大作。
 鹿内家がどのようにグループを牛耳っていたのか、外から見ればおまけの様に見える箱根彫刻の森美術館などがどんなに重要な位置を占めているのか興味は尽きず読む手がなかなか止まらなかった。ライブドアの買収にあたり攻防の中心に立った日枝さんも10年前は宏明氏追い出しの中心人物だったんですねぇ。
 確かに宏明氏が追い出されるには追い出されるだけの理由があったよう。だが一方で銀行マン出身の宏明氏が新聞社経営の触れてはいけない部分を遠慮なく指摘したことがクーデタの原因のひとつになったとの指摘は大変興味深い。
 部数凋落傾向に歯止めがかからないが権威だけはある新聞と収益力でも影響力でも新聞を凌駕しているテレビメディアとのいびつな関係についての指摘も興味深い。
 ただ残念なことは著述範囲が92年のクーデタとその後始末部分まで、ライブドア騒動についてはほとんど触れられていないこと。約10年間続けた取材の集大成としての意味は買うしこの本の価値を下げるものではないがフジサンケイグループについてこれだけのことが書ける人があの騒動をどう考えていたのか知りたい。本作は著者中川氏の単行本第1作。次回作に期待。