駅伝がマラソンをダメにした

駅伝がマラソンをダメにした
生島淳
光文社 (2005.12)
ISBN:4334033350
価格:\735
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 タイトルを見ると駅伝批判・マラソン擁護の趣旨でかかれたように見えるがそれは過ち。実は駅伝の魅力をさまざまな角度から伝える本。
長い歴史を持つ箱根駅伝*1だが1989年の日本テレビによる全区間完全生中継実施前と後では大きくこの競技の持つ意味が変わってしまった。といっても筆者は単純にマスコミ主導の競技運営体制を批判するわけでもない。元々は関東ローカルの一駅伝大会に過ぎなかった箱根駅伝が全国的に広く知れ渡るようになるとその知名度を利用しようとする大学側の思惑が生じる。箱根駅伝で活躍し大学の知名度を全国区にするために新興大学がさまざまな趣向を凝らす。のんびり構えていた伝統校も危機感を覚えて何とか名門復活を目指そうと必死になる。もちろん大学だけでなく選手個々人・コーチ監督たちもさまざまな方向から箱根に勝てるチーム作りを目指していく。そのやり方は単純なものではない。各大学・監督コーチごとの個性が見えてきて楽しい。
残念ながら箱根駅伝が終わってからこの本を読んでしまったが読みながら駅伝中継を見ていればおそらく大きく印象が変わっていただろう。
 で、タイトルに関連して述べると、箱根駅伝の注目度があがるにつれ、箱根駅伝に勝つための練習・チーム構成が必要になる。箱根駅伝で完全燃焼してしまい燃え尽きた後の競技生活では期待されたほどの成績を残せない選手も出てくる。また箱根駅伝1区あたりの距離が長いなどどうしても特殊性もあり箱根駅伝用のチーム編成が必要になってくる。全国的な知名度を持つことから関東近郊だけでなく全国の中高生長距離競技選手たちがみな関東の大学を目指した結果地域的な偏りが出てくる。その結果マラソンほか長距離競技選手育成に弊害が出てくる。
ってのが表題。もちろんそれはそれで説得力があり何らかの対策が必要な過大だと思うがこの部分を表題に持ってくるのはやや看板に偽りありか。
この著者は以前読んだ”スポーツルールはなぜ不公平か”もそうだったが、書名をつけるのが旨いというか看板に偽りありの本が多いというか、まぁ本書も面白かったからいいんですけどね。