蒼火

蒼火
蒼火
posted with 簡単リンクくん at 2006. 1.18
北重人著
文藝春秋 (2005.11)
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ISBN:4344010574
価格:\1,600

 昨年読んだ夏の椿*1の続編、従って舞台背景や主人公ほか登場人物も重複するが作品として完全に独立しており単独で読んでも楽しめる。
 前作同様単なる時代劇ではなくミステリーとしても楽しめる。しかも時代考証も綿密に行われているようで前半で登場人物が謎解きのきっかけとなる疑問はなるほどその通りとうならされた。著者はもともと建築家で都市計画を専門に行っていた方だそう。江戸時代の都市事情、長屋や武家屋敷、街づくりについてもいろいろと資料を集めたのだろう。描写が細かく具体的なだけでなくその役割・当時の使われ方についてもきちんと描かれている。
 前半事件を追う主人公やその仲間たちの活躍を追っていくと派手な場面が続くわけではなくむしろ地味で落ち着いた感じだがついつい引き付けられ呼んでいて止まらなくなってくる。後半になって登場人物たちの周りでさまざまな動きが発生すると思わず声を上げたくなるほど。
 もちろん謎解きだけでなくチャンバラシーンも魅力的。書名にもなった”蒼火”を持った敵役の何とも言えないキャラクターが読んでいてぞっとさせられる。
 最初にも書いた通りシリーズ第2作でありながら単独でもきちんと楽しめる。前作”夏の椿”の感想にも書いたが続きを読みたい気分とこれで完結してくれという気持ちが葛藤してしまう。特に本作のエンディングを読むとその気持ちがより強くなってしまう。
 もちろんこれは読者側のわがままに過ぎず、北重人氏の次回作が出ればまたすぐに手を出してしまうに違いない。今から楽しみ楽しみ。
 著者北重人氏が本名の渡辺重人でデビューに至る経緯を記した文章がありました。興味をもたれた方はあわせてどうぞ。*2