甲子園への遺言〜伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯

甲子園への遺言
門田隆将著
講談社 (2005.6)
ISBN:4062129663
価格:\1,785
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 五年間の現役生活を終え、野村克也率いる南海ホークスをかわぎりに30年間にわたって7球団で打撃コーチを務めた伝説の男が野球人生の最後の舞台を飾るべく目指したのは甲子園。確かにこの本は野球人生だけでなく本当の人生の最後の舞台となってしまった高校教諭として生徒や関係者達に強い影響を与えたことにもページが割かれている。しかしやはり僕が興味を持って読んだのは氏の30年にわたる打撃コーチ時代。彼が担当したコーチ分野は選手達に単なる打ち方を教えただけではない。相手投手の癖を以下に盗むか。過去のデータを収集しそれをチームの勝利にどのように結びつけるか。元祖スコアラー尾張氏の活躍から始まり、野村・ブレーザーコンビによる”シンキングベースボール”そしてID野球としてもてはやされたデータ野球。その裏面とも言えるスパイ行為とそれを防ぐための乱数表によるサイン交換までデータ野球の歴史として読んでも大変面白い。勿論氏の影響を受けタイトルを取った元選手達や同僚、彼をコーチに用いた元監督まで多くの野球関係者の高畠氏に関する証言が数多く収められている。その証言を読んでみるとせめて後数年高校野球の指導者として活躍できる時間がなぜ彼に与えられなかったのかという気持ちで一杯になる。残念ながら高畠氏が高校野球の指導に与えられた時間は充分ではなかったがプロ野球で彼が指導し活躍した選手達の多くが今立場を指導者に変えて次の世代の選手達に引き継ごうとしているのが心強い。昭和のプロ野球、特にパリーグの野球が好きだった人には必読の本、お勧めです。この本を取り上げた日記を見ると秋にフジテレビ系ノンフィクションでも取り上げられていたよう。見逃してしまったことが悔やまれる。