海国記〜平家の時代

海国記 上
海国記 上
ISBN:4104616036
価格:\1,680
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服部真澄
新潮社 (2005.7)
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 学校の歴史の時代に習った”平家の時代”はその後に続く”源氏の時代”のイントロに過ぎず、既に清盛は絶頂期を迎え後は没落の一途をたどる敵役でしかなかった。本書は清盛の祖父正盛の時代から始まり、以下にして平家の時代が成立したのか又それが終わったのかを再現していく。
 彼らが天下を取ったのはその武力を用いたのではなかった。中国との交易の窓口となる九州を抑え、九州と京を結ぶ瀬戸内海を抑えた。この辺りの記述は大変面白くこれまで国際金融社会を舞台にした小説を書いてきた服部真澄氏らしく時代劇と言えども実は彼女の得意分野で勝負していることがよく分かる。また瀬戸内海を自由に航行していた海の民達の存在も話をより一層盛り上げてくれる。
 しかし清盛の時代になってからは経済小説、民達の歴史の要素がどんどん薄れてしまう。これまで彼を支えていた父や友人達が次々と姿を消し孤独になった彼が一人右往左往する場面が延々と描かれている。武将が主人公で合戦も行われているにもかかわらず戦闘シーンが皆無な歴史小説になっている。(それはそれで面白いんだけど)政治的な駆け引きが多くなり経済小説の要素を取り込むことが難しくなったのかも知れないが民達を活躍場面は後半にももう少し取り込めたのではと思うと少し残念。
 あともう一つ、女性の台詞が所々今で言うところの京都弁風に描かれている。勿論舞台は京都であるしお公家さんやそれに使える人たちが多く登場するから強風の言葉遣いであったかも知れない。それにしても登場人物の一部の更に台詞の一部だけを京風にして残りは皆今の標準語に近い言葉遣いになっているのはどうしてなんだろう。女性を京風に話させるのであれば男性も当然京風に話さないとおかしいのでは。中途半端に京風の言葉を交ぜるだけなら全く使わなかった方がよかったのでは。
 面白く読ませてもらったんだけどもっと面白くなったのではと言う思いがどうしてもぬぐえない。残念。