入管戦記〜「在日」差別、「日系人」問題、外国人犯罪と、日本の近未来

入管戦記
入管戦記
ISBN:4062128527
価格:\1,680
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坂中英徳
講談社(2005.3)
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 著者の坂中氏は法務省に勤め入管業務に長年携わってきた方。これまで携わった業務に関連して芸能ビザで来日しているフィリピン人ダンサーの話や、修学ビザで来日する中国人と蛇頭との関わり、そして彼らを受け入れる学校や文部科学省、さらに地方企業城下町で働く日系ブラジル人達の問題に厳しい指摘を連ねる。しかし著者が本当に主張したいのは、消えゆく運命にある在日朝鮮・韓国人の問題とすぐそこまで近づいている日本の人口減少と外国からの移民の受け入れ問題。
 まず「在日」の問題、在日も2世3世の世代となり彼らは日本で生まれ日本語でものを考えることが多い。日本人との結婚も多くなってきた。その結果年に1万人のペースで在日朝鮮・韓国人の数が減少しているという。このペースで行くとあと数十年でほとんどいなくなってしまう。著者は彼らに日本国籍を取得してもらった上で民族のアイデンティティを残すべき。在日朝鮮・韓国人ではなく朝鮮・韓国系日本人として日本で生活すべきであるし、又日本側もそれを受け入れる体制を作るべきだという。
 これはもう一つの主張にもつながってくる。日本の人口は2006年をピークに減少をはじめ2050年には人口1億人を割り込むと予想されているそう。そうなった際に外国からの人の移動を受け入れ現在と同じ1億2千万人(=それに伴う経済規模)を維持するか、日本人だけの閉鎖社会を作りその人口規模(=それに伴う経済規模)で国を維持するかの二者択一に今迫られているという。
外国からの人の移動を受け入れた場合の日本がどのような社会になっているかシミュレーションした文章を載せ前者を選ぶのが日本にとって良い選択だと主張しているよう。日本に入ってくる外国人を入管業務で数多く見てきた著者ならではの主張であると思うがやや理想に走りすぎた極論のような気がする。著者の主張に同意するかどうかは別にして人口減と外国人受け入れ問題を考えるきっかけにはなると思う。