メディア裏支配〜語られざる巨大マスコミの暗闘史

 著者は元TBSで報道畑を歩み現在は”国会TV”*1を運営する株式会社シー・ネットの代表取締役社長。政治部・社会部記者時代は田中角栄に気に入られ時には目白邸に呼ばれ話の聞き役にも指名されたこともあったそう。このあたりのことは”裏支配 いま明かされる田中角栄の真実”*2に記されているようなのだが未だ手付かず、いずれ読んでみたい本。
 で、本題。田中角栄とその権力を引き継ぎ郵政族の親分として放送業界を牛耳ってきた竹下・金丸・野中らの姿を見、また記者クラブの閉鎖性(元々新聞社を中心に作られたのでテレビ局の報道記者が記者クラブに入るためにはいろいろとご苦労もあったよう)。
 郵政担当、田中番を経験した後アメリカのC−SPANという議会中継専門チャンネルが有ることを知り日本でも同様のサービス”国会TV”を始める。しかしアメリカの多チャンネルサービスで”ニッチ”な専門チャンネルの存在を可能にしたベーシックサービスが成立しなかった。(ベーシックサービスとはCS放送を受信する基本料金のみで受信可能なチャンネルのこと。有料のベーシックパックとは異なる。)その結果、国会TV他多くのCSチャンネルが赤字撤退を余儀なくされ結局残ったのは新聞社が牛耳っている地上波全国キー局がその影響力を及ぼす局のみで独立採算を目指した局はほとんど残らなかった。
 なぜ”国会TV”が撤退しなければならなかったのか、その裏で郵政族NHK、新聞社がどのような行動をとったのかを次々と明らかにしていく。
 ただ現在田中角栄からの流れを汲む郵政族のドンは野中広務引退後その後継者を出せない状態が続いている。メディア側のドンだった海老沢勝二・渡邊恒雄もその影響力の低下が目に見えて起こっている。
 一方でライブドア気象庁記者クラブへの加盟を申請したり、フリーライター寺澤有氏がフリー記者の権利を認めるよう国を訴えている。*3記者クラブについてはフリーの記者や雑誌メディアだけではく外国メディアにも差別的な対応をしていると取り上げられていることもあってか、担当裁判官は寺澤有氏に好意的な発言をしているとも伝えられている。
 時代が明らかに動きつつある今、過去から現代にかけてどのような”メディア支配”が行われていたのか、確認するためにも一度目を通しておいたほうがよい本。