斬る

斬る

 久しぶりに日本映画専門チャンネル”監督岡本喜八の世界”より拝見。原案は山本周五郎の短編”砦山の十七日”。疲弊腐敗した藩政の圧政の原因である城代家老溝口佐仲が青年武士七名に斬られた。家老を斬った後七人の侍たちが籠もった”砦山の十七日”を描いたのが原作。原作では密室に籠もった侍たちの追いつめられた精神状況に重きを置いていたがこの映画ではそれはむしろ従。この藩内の騒動に加わった無宿者兵頭弥源太(仲代達矢)、元百姓ながら何とか侍になりたい田畑半次郎(高橋悦史)の二人が主役。砦山に籠もってごちゃごちゃ内輪もめ、また武士同士でドンパチしている間に侍でもない二人が中心となって話を動かしていく。侍の義憤や正義感がテーマであったはずの原作を結局侍以外の人間が解決してしまうのはやはり岡本喜八監督らしいのかも知れない。
 クライマックスは次席家老鮎沢多宮(神山繁がまた似合うんだわ、こういう憎々しげな敵役)と兵頭弥源太の決闘シーン。兵頭弥源太はまともに歩けないほどの重体でまた舞台が茶室と言うこともあって決闘にもかかわらず双方が座ったまま。にもかかわらずあの迫力は何だろうな。昔から見ている人には今更何をと言われそうだが岡本喜八監督の新しい魅力を知った作品でした。