民営化される戦争〜21世紀の民族紛争と企業

民営化される戦争
本山美彦
カニシヤ出版 (2004.10)
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先日イラクで起こった斎藤昭彦さん殺害ニュース報道の中で紹介されていた本なのでてっきり斎藤さんも所属していたという警備会社(と言うか軍事請負企業)の本だとばかり思って読み始めたらそこにとどまらない本だった。勿論その類の企業(本書ではPrivate Military Company 略してPMCと表記されている)の話にも結構な紙幅が割かれていてまたこのジャンルに関して僕の知識が疎いこともあり教わることが多かった。斎藤さんの事件のカラミもあってPMCが請け負う仕事と言えば戦地にスタッフ(ありていに言うと傭兵)を派遣することと思いがちだが実はそれはあくまでも業務の一部でありまた下流工程にあたる。例えば技術面一つとっても最新の武器の操作法は非常に高度化しており現場の兵士には扱いきれなくなっている。当然PMCのスタッフがその部分を請け負うことになる。技術面だけではない、作戦面、兵器や食糧を現地に運ぶ兵站の部分もPMCの力無しでは戦争は成り立たなくなっている。
 当然強大な力を持つPMCと政治家との癒着も大きな問題となる。この本のテーマはPMCとはどんな会社かと言うよりもむしろこの癒着部分にある。当然ブッシュとその政権を支えるネオコン派とそのファミリー企業がPMCとどのような関係にあるのか明らかにしていく。また、ブッシュ政権にとどまらず長い現代史の中でPMCがどのようにその企業規模を拡大してきたのか、またPMCではなく普通の企業と思っていたメディア会社、通信会社、小売り大手が実は戦争をバックアップする立派なPMC企業であることも明かされる。(小売り大手も物流を抑え兵站に関わっている)ただ、この本と通して著者の反米意識が強すぎてもう少し冷静に筆を進めてもらえないかなぁと思うところもしばしば。興味深いテーマだし具体的な事例も挙げ分かりやすい本だけに残念。