子どもの替え歌傑作集

 かねたくさんの新・読前読後で紹介されていた本*1。なかなか面白そうだったので手にとって見た。
 取り上げられている唄は明治・大正に作られた文部省唱歌から軍歌そして戦後歌謡曲、テレビ主題歌またCMソングなどかなり幅広い。世代的に限定されてしまう唄もあるが、元唄とともに(あるいは替え歌だけが)世代を超えて長く歌い継がれているものも多くなかなか楽しく読めた。
 かねたくさんの評にも取り上げられているが”インドの山奥で・・・・”で始まるレインボーマンの唄や、”誰だ、誰だ・・・・”のガッチャマンの唄などは世代的にもどんぴしゃでつい懐かしさがこみ上げてくる。著者は兵庫県の生まれで大阪国際児童文学館にお勤めだったこともあり、関西エリアで採取した替え歌が多いよう。”ジャスコで逢いましょう”の替え歌まで収録されているのを読み懐かしさを超えて感動すら覚えてしまった。実家の近所にあったスーパー”イズミヤ”のテーマソング*2の替え歌が収録されていなかったのは残念。ジャスコのほうは関西限定とは言え讀賣テレビの「奥様便利帳」(記憶があいまいだが2時のワイドショー内の一コーナーだったようにも思う)で流れていたのに対してイズミヤのほうは店内BGMに限定されていて知っている人がそのお店の近所に限定されているのかもしれない。
 もう一つ意外だったのは”七つの子”が収録されていないこと。志村けんが8時だよ全員集合の少年少女合唱団で唄っていたあれである。あの替え歌は元歌の頭の部分だけだったが、同じように歌の一部分だけの替え歌もいくつか収録されている。少なくともあの番組を見ていた世代には全国津々浦々まで知られた童謡の替え歌では認知度・普及率ダントツいちばんの歌だと思う。確かに子どもの間で自然発生し伝播したものとは異なるかもしれないが、(あの替え歌は志村けんや番組スタッフが自ら作ったのか、それともどこかで子どもが歌っていたのを耳にし番組で取り上げたのかわからないけれど)”子どもの替え歌”をテーマにするのなら無視できない歌だと思うのですがいかがなものでしょう。
 後、いくつかの歌は著作権の兼ね合いから元歌だけでなく替え歌の収録すらできなかったものもあるらしい。
著者は後書きで

中でも、お正月にもちを食べすぎて死んでしまい、霊柩車の到着を待ちわびる「お正月:の替え歌

続けて

私が大阪府下の小・中学生から集めた替え歌の中では、最高頻度を示すほどいきわたっている

と書くように僕にもああ、あの歌かとすぐにピンときたし同じように分かる人も多いだろう。元歌も替え歌も収録できなかったのがこの「お正月」を含めて7曲、新版を刊行するに当たり新たに3曲が元歌収録を断られたと言う。著者はこれについてかなり憤りを感じているよう。著者の著作権や元歌の引用に対する考え方は直接本書を当たってもらいたいが全くその通りだと思う。確かに替え歌になった段階で下品になったり、尾篭なネタが含まれていたり、残虐なものに変えられたりすることが多いがそれも含めて子ども文化(場合によっては大人も含む)だと思うしそれを研究しようとする著者や他のかたがたの苦労がこのような障害で報われないのは残念でならない。一方で嘉門達夫の”サザエさんグラフティー”がCD収録できない幻の作品となってしまっているなど著作権の扱いにはとりわけ厳しいと聞くサザエさんテレビ版主題歌とその替え歌が収録されているのは意外だったりもする。いろいろ問題もあろうがもう少し大人の対応があってもいいのではないかな。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kanetaku/20050403

*2:どれくらいの方が覚えているか分からないが、”ええもん高いのが当たり前、ええもん安いのがイズミヤ・・・・”と言う歌詞だった