今昔物語集の世界(ISBN:4005004075)

今昔物語集の世界
小峰和明
岩波書店 (2002.8)
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 山崎バニラさんお勧め本シリーズ*1第二段(シリーズ化するのか?)
中高生を対象にした岩波ジュニア新書の一冊ということもあって著者小峯氏が読者に語りかけるような文体で書いてくださっているので大変読みやすく判りやすい本です。
 しかもいちいち細かい単語の解釈や学術的な説明よりもタイトルどおり、まず今昔物語集の”世界”の雰囲気を伝えてくれる。
 キーワードにあげられた言葉は「門」「橋」「坂」「樹」の四つ。こちら側と向こう側の間におかれるもの。単純に場所がこちらかあちらかだけではなく、人と人以外のものの境であったり、現世と死後の世界の境であったりする。二つの世界は対立するのではない。むしろこの四つの場所は二つの世界のどちらでもなくそれぞれが混在した世界を象徴することになる。
 象徴と言えば、取り上げられた門にしても橋にしても、今昔物語集が書かれた頃は既に存在していないことが多いというのも面白い。実在しないからこそ向こう側の世界をより身近にし話を成立させる重要な要素になりえたのだそう。
 また話の途中で物切れになっていたりタイトルしか書かれていない話も多く存在する。そのような不完全な部分も今昔物語集の魅力であると著者は言う。あくまでも入門書でありこれ一冊で今昔物語集を判った気になるわけには行かないが、今昔物語集をもっと知りたい、もっと触れたいと思わせる、まさに入門書として最適な本。