山際素男 / Keer Dhananjay
光文社 (2005.2)
通常24時間以内に発送します。
20世紀、インドで民衆のために戦い独立を勝ち取った英雄と言えばいったい誰を思い出すだろう。多くの人が
ガンジーと答え人によってはさらにネール首相を付け加えるかも知れないが本書の主人公アンベー
ドガルの名を挙げる人はほとんどいないだろう。僕も実は本書で初めてその名を知った。彼は厳しい
身分制度である
カースト制度下で最下層
カーストの更に下家畜以下で人間扱いされなかった不可触民の子として生まれながら学問に励み、第二次大戦後独立を果たしたインドで初代
法務大臣にまで上り詰めた。また、
カースト制度をベースにした国民宗教
ヒンズー教を捨て仏教に改宗している。彼とともに不可触民達30万人が改宗して始まったインド新仏教は現在では一億人を越える信者がいるという。勿論彼の波瀾万丈の生涯も面白い。また、不可触民がどのような扱いを受けていたのか、更に不可触民の解放と植民地からの独立を両立することの難しさ、インド・
パキスタンの宗教対立の元など今に続く様々な問題もよく分かる。もっと面白いのが
ガンジーとの対立関係。清く正しく万人から広く支持されたと思っていた
ガンジーも政敵から見ると不可触民のことなど何も考えず自分の立場を保身しその立場が危うくなると必殺技”衰弱し寸前までの断食”を繰り出す扱いにくいことこの上ない厄介者になっている。他民族他宗教国家を一枚岩にまとめることの難しさも含めてインドの父
ガンジーの日本人には知り得ない一面も分かる。訳者
山際素男氏には不可触民やインド史に関する著書が本書以外にもあるようなので機会を見てそちらも手に取ってみたい。