ジャスミン(ISBN:4163225501)
時代は1989年第二次天安門事件直後から1995年の阪神淡路大震災まで。国境を越えた愛と時代を超えた親子の再会が二つの軸となり、そこに日本の架橋が果たした歴史的役割やスパイ劇まで絡み合ってくると言うと大時代的なロマン小説のよう。実際にはそんなに愛憎劇ではなくもっとさらっとしているんだけどそれでいて読み応えのあった作品。僕は単行本を一気に読んだがもともとは文芸誌上に掲載された連載小説。僕は先に”さらっとしている”と書いたがこの作品を毎月毎月少しずつ読み進めた人はきっと違った印象を持ったろう。いわゆる”はらはらどきどき”とは違うがやはり続きが気になって仕方なかったんじゃないかな。雑誌掲載で完結したのを見届けた上で単行本が出たら改めて一気に読み直した人が多いような気がする。一気に読んでしまったのはちょっともったいなかったかも。とは言え、続きが読めるのにとてもじゃないが中断などできない。辻原氏の作品はこれがはじめて。気にはなっていたんだけど噺家さんを取り上げた” 遊動亭円木 ”のほうも未だ手付かず。次はこの作品に手を出してみよう。