キングの時代(ISBN:4000225170)

『キング』の時代
佐藤卓己

出版社 岩波書店
発売日 2002.09
価格  ¥ 3,990(¥ 3,800)
ISBN  4000225170

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 以前”言論統制*1を読ませてもらった佐藤卓己氏の作品。戦前日本初の発行部数百万部を達成した雑誌”キング”をテーマに”国民メディア”成立の過程を時代を追って検証する。
 ”キング”という雑誌やその内容だけでなく宣伝方法やこれを出版した”大日本雄弁会講談社”という出版社の性格。さらには社長で”立志伝中”の人である野間清治にまでその検証対象は広がっていく。また当時のラジオ、トーキーと比較することで”キング”の果たした役割が今の我々が考える”雑誌”以上の影響力を持っていたこと”ラジオ的・トーキー的雑誌”であったことも明らかにする。
 本来この本は”キング”のようにはらはらどきどきしながら読む本とは違うので以下に記す僕の感想は不適切かも知れないが特に前半の行け行けどんどん拡大路線時代の話は大変面白く読めた。いわゆる学術書にも関わらず450頁を越える大作を一気に読ませるだけの内容と力を持った作品。インターネットの普及と多チャンネル化で戦後日本を牽引した”国民的メディア”であるテレビの役割が変わっていきそうな今、かつて”国民的メディア”であった雑誌”キング”の栄枯盛衰と果たした役割を見直すのは皮肉ではあるが今読んでよかったなぁと思える本。