群青に沈め〜俺たちの特攻

群青に沈め―僕たちの特攻

群青に沈め―僕たちの特攻

 先日に引き続き熊谷達也氏の作品。これまで東北を舞台としたり明治大正時代が多かった氏が本作で選んだ舞台は太平洋戦争末期の特攻舞台。特攻と言っても神風特攻隊のようなメジャーなものではない。伏龍と言われる作戦に従事した若者たちが主人公。この伏龍、潜水服を身につけ海底に身を潜め地雷をつけた棒をもって上陸してくる米軍待ちかまえるという人間機雷。今の世から考えればなんてばかばかしい作戦だろうと思ってしまう。本作の主人公も同じような印象を持ちながらもいつ出撃命令が出てもいいよう訓練を続けている。戦時中の悲壮感は実はあまり伝わってこない。むしろ16,17歳の少年らしい感情が伝わってくる。誤解を生みそうな表現だがこの軽さから戦争のリアルさが伝わってくるような気がする。

 なお、熊谷氏の新作「聖戦士(ムジャヒディン)の谷」は他人の著作無断使用の指摘を受けて連載が中止になったようだ。

無断使用:作家の熊谷さん、表現を 小説、連載中止
 直木賞作家の熊谷達也さんが雑誌「小説すばる」07年12月号(集英社)に掲載した小説「聖戦士(ムジャヒディン)の谷」の中で、フォトジャーナリストの長倉洋海さんの著書から表現を無断で使用したとして抗議を受けていたことが分かった。熊谷さんと「小説すばる」編集部は今月発売の4月号で、「著作権を侵害した可能性が高い」と認め、シリーズ連載の中止とおわびを掲載した。
 「聖戦士の谷」は80年代のアフガニスタンを舞台に、反政府ゲリラ組織と行動をともにする日本人カメラマンを描いたシリーズの第1話。4月号に掲載された説明によると、長倉さんは「マスードの戦い」など複数の著書から「表現を無断で使用している」と抗議。編集部が調査した結果、引用の程度が参考文献の域を越えていると判断したという。
 誌上で熊谷さんは「深く反省し、二度とこのようなことを起こさない」との考えを示している。【手塚さや香

毎日新聞2008/03/16

 熊谷氏がまた新しい舞台を選んでいたようだったので残念だがまた新作を期待したい