一人さみしき双葉山

一人さみしき双葉山 (ちくま文庫)

一人さみしき双葉山 (ちくま文庫)

 まずは版元筑摩書房の本書紹介文を引用

双葉山ってお相撲さんが死んだ時ね、焼場に恋人が現れたの。そして、そっと係の人にお金をつつんで、お骨を分けてもらって帰ったんですって」―なにげなくもらした母の一言から、求道の精神と無双の強さとを合わせもつ、神格化された名横綱双葉山の素顔を追い始める。女流ノンフィクション作家が角界のタブーに挑んだ意欲作。

 実は本書文庫化に当たり表題にあげた”一人さみしき双葉山”に改題されている。これは本文中にも引用された吉川英治の句”一人さみしき勝角力”からとったもの。時代の寵児を超え超人、神とあがめられた双葉山の孤独な素顔を追った作品と言うことでこちらに改題されたのかもしれない。上記引用文にもあるが本作品を書くきっかけから前半部分は彼と(皆年上の)女性との関わり。本作品のテーマは女性との関わりをおいながら双葉山の素顔を記す作品なのだからやはり原題である『双葉山はママの坊や』のままが良かったのではないかと思う。
 まぁそれはともかく、高校卒業後海外留学していたせいもあって男尊女卑の考え方というか相撲取りにあこがれながら一歩引いたところの陰の立場で満足する女性の考え方に共感できない筆者だからかける双葉山の女性関係とそこから見えてくる彼の実像はなかなかおもしろい。読んだ甲斐がありました。