瀬川晶司はなぜプロ棋士になれたのか

 昨年将棋会の話題を一身に背負った瀬川昌司さんプロ入り騒動を追ったノンフィクション。
当然瀬川さんも随所に登場するが本書の主役は彼ではない。
プロ入り試験を実行するために奔走するプロ棋士、アマチュア将棋仲間、マスコミ関係者の動きを追った本になっている。
彼らがプロ入り試験のために奔走したのは何も瀬川さん個人に同情したからではない。
このまま何もしなければ先細りの一途をたどる将棋界に危機感を覚えたからだった。
最初からすべての棋士・関係者が危機感を共有していた訳ではない。最終的にプロ編入試験が実施されることが決まるまでの過程は奔走されたかたがたのご苦労読み取れる充実した内容になっている。もちろん実施されると決まってから後もその苦労はとまらない、むしろどんどん話しを先に進めてしまう人がいてこれまで試験実施を目指していた人がその暴走にブレーキをかけながら周りとの調整に走る、結局暴走は止められず調整が間に合わなかったようなこともあり関係者の苦労がしのばれる。
 で、先日より世間の(一部)をにぎわしている名人戦主催紙移動問題。編入試験でも暴走した人がやはりここでもご活躍だったようだ。もちろん全容が明らかでない今判断を下すのは難しいが今表に出ている情報だけで考えると暴走の結果、相手を怒らせてしまい今その収拾にくろうしている。しかも暴走した本人は収拾もたやすくできると思っているようだが本当にそうだろうか。さらに今回の混乱の裏で暗躍している人がいると名指しで批判しているがこの批判もどうもピントはずれのような気がしてならない。
 一部には名人戦毎日新聞から朝日新聞に移った場合、読売新聞が主催する竜王戦から撤退するとの発言も報じられた。
本書の中でプロ編入試験実施のため活躍したマスコミ関係者として取り上げられているのは読売新聞将棋担当記者なので即撤退するとは考えにくい。
 一方で読売新聞担当記者は将棋連盟が各棋戦の魅力を挙げるための努力をせずただただ契約金を上げてくれと言われてもいつまでも要望には応じられない。改革されないのなら契約金の値下げもありえるような発言をしていたのでそれと同じようなことをいったのかもしれない。
 今回の騒動を見る限りただただ契約金を上げてくれと要望しあげてくれるなら主催紙移動もやむをえないと短絡的に考えた結果のように見えてならない。
 各棋戦の魅力を挙げるための努力ってのはどこにいったのだろう。棋士だけでできないのなら外部の人材を投入するなど抜本的な改革を実施しないといけないのかもしれない。