夏の椿(ISBN:4163235809)
第11回松本清張賞最終候補作品。夏の椿と言うタイトルも同賞選考委員伊集院静氏の命名だそう。*1なかなかの傑作で本作を落としてまで受賞した作品の出来が気になってくるぐらい。ジャンルは時代劇ミステリー。と言っても謎自体は最後の最後まで明かされないわけではなく事件の全容は中ほどでほぼ明らかになる。最後の最後まで種明かしされない部分ももちろんありますが。だからと言って決して尻すぼみになるわけではなく最後までじっくりと読ませてくれる。田沼時代から松平定信の時代へと移り行く時代を舞台にその過渡期の政治的な動きを背景ににじませながら本筋はそれとは無関係な市井の人たちの姿を描く。出身地酒田のコミュニティサイト”今日の庄内”の記事*2 *3によると次回作は本作の続編になるよう。主人公他登場人物のキャラクターもいいので続編に期待したいのだが、一方でせっかくきちんと完結しているのにむりに続編を書かなくてもいいのではと思わせる完成度。時代劇好きの方にはぜひ手にとってもらいたい。