興行界の顔役(ISBN:4480039791)

興行界の顔役(ちくま文庫)
猪野 健治

出版社 筑摩書房
発売日 2004.09.08
価格  ¥ 998(¥ 950)
ISBN  4480039791

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 直接”落語”に関係する本ではないが演芸(主に浪曲)にも絡んだ本なのでこのカテゴリーわけでご勘弁。
 日本の興行界の草分けでありまた戦後の興行界の重鎮でも会った永田貞雄氏の一代記。(お恥ずかしい話、読む前ちょっと勘違いしたのだが大映の永田”ラッパ”雅一氏とは全く別人で血縁関係もない。もちろん興行の世界でのつながりはあったろうが)
 歌謡界を中心にした山口組三代目田岡一雄氏とのつながり、さらに力道山が興した日本のプロレスを裏で支えたのも彼、永田貞雄氏。以前、旧ソ連とのつながりを駆使した伝説の呼び屋神彰氏の伝記*1を読んだがもちろんその分野でも負けてはいない。その詳細はぜひこの本を読んでもらいたいので書かない。やはり面白いのは、浪曲師を志して故郷九州を離れてから、変声期に扁桃腺を患い浪曲師の道を立たれ興行師の道を歩み成功していく立志伝の部分。しばしばその発言が引用されている吉本興業元会長林正之助氏が一目置いていたのもよくわかる。終章でビートルズ武道館公演をひとつのきっかけに日本の興行界は変わってしまったと記されている。さらに時代を下った現代ではいわゆる名プロデューサーと呼ばれる人は何人もいるだろうかのるかそるかの大博打をし、また興行界だけでなく政界、財界さらに裏の世界にまで顔の聞くようなすごい興行師というのはもう出てこないのだろう。ここの所現代史を裏から見るような本を続けざまに読んだがこれが一番面白かったかな。