「妖しの民」に生まれきて(ISBN:4480039406)

「妖しの民」と生まれきて(ちくま文庫)
笠原和夫

出版社 筑摩書房
発売日 2004.07
価格  ¥ 819(¥ 780)
ISBN  4480039406

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 著者はシナリオ作家として著名な方。氏の作品としては仁義なき戦いシリーズや浪人街など何作品か実際に拝見し楽しませてもらった覚えもあるのだが今回はそう言った作品のシナリオ作家の方が書いた著作という意識はあまり無く(失礼)むしろタイトルに書かれた「妖しの民」という言葉に惹かれて読んでみた。
 先に読んだ”ふるさとは貧民窟(スラム)なりき”(ISBN:4480039732)*1の様なある意味で特別な地域出身ということもなく、またシナリオ作家修業中の話は書かれているが東映に常勤嘱託採用される寸前で筆を止めているので当時の映画界の内幕が書かれていると思うとそれも期待はずれになりそう。では面白くなかったのかというとそれは違う。複雑な家庭環境、大竹海兵団でのエピソード、そして映画界に何とか入り込もうとしながらそれを果たせずにいる間過ごした木挽町のバーテンとして過ごした青春時代。氏のシナリオ作品に詳しい人ならそれぞれのエピソードの影響を受けた映画のシーンを思い起こせるのかも知れない。残念ながら僕にはそう言うシーンを思い出すことは出来なかったが終戦を挟んで戦前戦後を通じてある一人の青年が過ごした日々が克明に浮かんでおり大変興味深く読むことが出来た。