エレキ源内殺しからくり(ISBN:4087753425)

エレキ源内殺しからくり
米村圭伍

出版社 集英社
発売日 2004.10.26
価格  ¥ 1,890(¥ 1,800)
ISBN  4087753425

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 毎度おなじみ米村圭伍の新作。といってもこれまでの風見藩退屈姫シリーズとはまったく別個に独立した作品。タイトルを見ればさては江戸の奇才平賀源内が主人公かと誰もが思うが実はそうではない。読み始めてそうそう彼は亡くなってしまう。で彼が残した忘れ形見”つばめ”が今作の主人公。源内が残した謎の秘宝をつけねらう謎の黒頭巾たちにつばめや聖護院蕪組の千草、さらには軽業一座の面々まで加わって・・・・。
 基本的にはこれまでの米村作品同様ほのぼの時代劇なんだけど、主人公つばめに退屈姫のような余裕が見られないこと。(退屈姫シリーズのくのいちお仙のようにあるいは彼女以上にずっとぴりぴりしている。)また、将軍跡取り問題や田沼意次らの泥どろとして権力闘争が歴史上実在の人物間でなされてそれがほのぼの感をそぐ。これまでの作品にも将軍や田沼の名前が出てくるんだけどちょっと違う。退屈姫シリーズの幇間一八や落ちこぼれお庭番倉地政之助のような狂言回し的な人物が見あたらない。あえて言えば狂歌師で源内の友人だった四方赤良こと大田直次郎がそうなんだろうけどちょっと弱い。
 米村さんの作品は大好きで出れば必ず読むことにしているので要求する水準が高いのかどうも厳しい評価になってしまう。何も知らずに読めばもう少し違った評価になるかも知れない。もしこれから米村圭伍作品に手を出そうかなという方がいれば最新刊の本作ではなく刊行順にまず退屈姫シリーズ三部作から読むことをお勧めします。