世界を動かす石油戦略(ISBN:4480059857)

世界を動かす石油戦略(ちくま新書 385)
石井彰著・藤和彦著

出版社 筑摩書房
発売日 2003.01
価格  ¥ 735(¥ 700)
ISBN  4480059857

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 我々日本人の石油に対する誤った固定観念を除いてくれる良書。まず第一に石油は国際政治力学の影響を強く受ける「戦略商品」ではなく、あくまでもその価格は市場によって決められる流通性・流動性の高い「市況商品」であると言うこと。また、中東情勢に大きく関与するアメリカもこの地域から輸入する原油の量はアメリカが使う量の数%でしかないこと。さらに新しい油田の発見や採掘技術の発展により政治的・軍事的な「石油の分捕り合戦」など当分起こりそうにないことをわかりやすく説く。
 とは言え、では今後何の危惧もなく石油の安定供給がなされるとのんびりしていてもいいのかというとそういうわけでもない。流通性の高い商品であるとは言え全世界の供給量の約4割を占める中近東地域の不安定さは改めて述べる必要のない状態。今後新たな石油供給地域になると見込まれる旧ソ連地域にしても同様である。また、急速な経済成長に伴う需要の伸びが見込まれる中国を無視することはできない。
 このような状態でかつエネルギーの大部分を中近東からの石油に頼りきっている日本はどのようにするべきか。最後に著者が述べる戦略は本人もあとがきで記している通り、今の時点では”大風呂敷”が過ぎるような気もするが、アメリカに追随しまた輸入先も中近東一辺倒から脱却し将来のエネルギー戦略をきちんと立てる必要に迫られていることは確かなようだ。