回顧九十年

回顧九十年
回顧九十年
posted with 簡単リンクくん at 2005. 9.27
福田赳夫
岩波書店 (1995.3)
この本は現在お取り扱いできません。
 普段チェックしているpataさんのBlogで紹介されていた本。そのエントリーの中に*1

 その(=小泉首相の 引用者註)ルーツともいうべき、岸信介と、岸派を引き継いだ福田赳夫が何を考え、何をやろうとし、失敗したのかを、もっと深く知るべきだと思った。福田元官房長官福田赳夫の長男だし、安部元幹事長は岸の女婿の息子だから。小泉首相自体、ロンドン留学中に親父さんが亡くなって、急遽総選挙に立って負けた後、野沢町の福田赳夫邸で3年間、下足番をやっていたのだから。

 と記されているのを読み、なるほどごもっともと思い手にとって見た。
 この本の詳しい内容はpataさんのエントリーを読んでもらえればと思うのでここでは簡単に感想を。
 福田が自身の業績を回顧するこの本、氏の行動を大きく分けると3期に分かれると考える。
 まずは大学を卒業し大蔵省に入省、戦前の行政を支えるトップの一人として働くのが第1期。
 戦後、1950年に大蔵省を退官し1952年の総選挙に無所属で立候補当選を果たし政治家となってから総理大臣として活躍するのが第2期。
 最後に総理大臣を退任後もOBサミットを提唱するなど昭和の黄門として活躍するのが第3期。
 当然読む側が期待するのは第2期、特に角福戦争や四十日抗争の部分だと思うがその部分の記述が妙に薄い気がする。もちろんまったく触れていないわけではないんだけれど政争に直接触れるのではなく田中角栄三木武夫大平正芳らの政策を批判し自らの実績を誇る姿勢はある意味で人間らしくていい。
 自らの実績を誇る部分では第3期のOBサミットの部分でより強く感じられる。それが却って抗争に終始し首相としての人気が2年しかなかったことへの無念さを強く感じさせる。
 池田・田中の積極財政路線に対抗した安定成長路線、派閥解消と党執行部中心の党運営など福田が目指しながら派閥抗争の中で実現できなかった政策はことごとく小泉首相に引き継がれていることが分かる。
 日米関係強化や自主憲法制定などは福田だけでなく更にその上の岸信介の影響を受け継いでいるといえるのだろう。pataさんはそれを受けて『岸伸介回顧録』に手を伸ばしていらっしゃる。僕がこの本を読んでつくづく感じたのは昭和政治史基礎知識のなさ。新書本か何かでまず概略を抑えてから更に手を広げてみたい。もしかしたら『岸伸介回顧録』に関してはpetaさんのエントリーを読むだけで満足してしまうかもしれないけれど。(苦笑)